もう一つのハワイイを「シャングリラ」ツアー
2004年12月01日
もう一つのハワイイを
「シャングリラ」ツアー
ドリス・デューク邸「シャングリラ」ツアーに、
スタッフGingerが参加してきました。
いったい何のツアーかというと、ドリス・デューク(女性)という大金持ちが建てた「シャングリラ」と呼ばれる大豪邸をダイヤモンドヘッドのオーシャンフロ ントに見に行こうというもの。
ハワイイの歴史的建造物であり、イスラム芸術のコレクターでもあったドリスのコレクションは一見の価値あり!!!
■まずは ドリス・デュークついてドリス・デューク (1912 − 1993)
1912年、ドリス・デュークは、アメリカン・タバコ・カンパニーとデューク・エネルギー・カンパニーの創設者であり、名門私立大学、デューク大学(ノー スカロライナ州)の後援者であったジェームス・B.デューク氏の一人娘としてニュー・ヨークで生まれ、アメリカ東海岸ロードアイランド州ニューポートで 育った。
タバコビジネスで一大財産を築いた父、J. B.デューク氏は1925年他界。ドリスは、デューク家を若干12歳で相続した。その後20代でジェームス・クロムウェル氏と結婚、1936年にこのイス ラム芸術の世界、「シャングリラ」の建設に着手し、1993年カリフォルニア州にて80歳の生涯を閉じた。他界する直前までの約60年間、彼女はこの地で その生涯を過ごした。他界後、美しいハワイに海に散骨されたのである。
身長180センチ以上という長身のドリス・デュークは、水泳、パドルカヌー、サーフィン等アクティブなスポーツ・ウーマンだったと言われている。サーフィ ンでは、あの有名なサーフィンの神様、デューク・カハナモク兄弟とも親交があった。邸宅の一部に余暇を楽しむためのプレイ・ハウスを設け、生涯バレエの レッスンを取り入れてその美貌を維持していたと言われている。
彼女は、様々な文化に興味を持ち、特にイスラム文化圏や東南アジアの優れた芸術・美術品の数々を収集した。そしてそれらの配置や内装との調和、デコレー ションなどにおいてセンスを発揮した。また、時には自らデザインした家具調度品の製作依頼に明け暮れた。イスラム文化圏諸国から120人もの職人を呼び寄 せ、モザイク・タイル・パネル、大規模な色彩の鮮やかな天井、精巧なアーチ型の戸口などの製作を委託したこともある。
ドリス・デュークは、優れた芸術品、美術品の収集家であった傍ら、パフォーマンス・アート(芸能)の支援者として、また自らジャズピアニスト、作曲家、ゴ スペル聖歌隊の歌手として活動していた。また、プライベート・ライフを重視したライフスタイルを貫く主義であったが、生涯を通して、医学研究支援や児童福 祉活動などに熱心に取り組んでいた。21歳の時には、「インディペンデント・エイド」という(福祉基金)を設立、これは、後のDoris Duke Foundationの前身である。
■次に「ドリス・デューク邸・シャングリラ」について
イスラム文化圏芸術の世界、「シャングリラ」は、1936年から約2年の歳月をかけて、大西洋とダイヤモンドヘッドを一望するオーシャンフロントに建設さ れた。ハネムーン先で立ち寄った中東、インド, 南アジア諸国の芸術、特にイスラム文化圏の芸術に魅了され、と同時に、ハネムーン旅行の最終地であったハワイの自然の美しさ、アウトドア・ライフ・スタイ ルに魅せられ、ダイアモンドヘッドの東、ブラック・ポイント、ハワイ語では「Ka’alawai」というこの土地に彼女の最も贅沢な隠れ家、「シャングリ ラ」を建設することを決めたのである。
5エーカー(15,000スクエア・フィート)の敷地に建てられた邸宅は、イラン、シリア、モロッコ、トルコ、インドなどイスラム文化圏諸国から収集した 手の込んだモザイク・タイル・パネル、色鮮やかな布地、陶磁器等といったイスラム芸術の骨董品、美術品など約3500点が展示されている。また、イスラム 芸術の骨董品、美術品の展示だけではなく、彩色された天井、丹念に彫刻が施されたドア等、建物自体がイスラム文化圏の芸術の粋を極めた芸術と文化の館であ り、イスラム芸術の美とハワイの自然の美しさが融和した「シャングリラ」は彼女の自伝そのものだといえるだろう。
■そして「シャングリラツアー」についてド リス・デューク・イスラム芸術財団Doris Duke Foundation for Islamic Art (DDFIA) が所有している「シャングリラ」は、ハワイ州に現存する最も重要な建築物の一つである。2002年11月よりホノルル・アカデミー・オブ・アーツによる予 約制の特別ツアーにて一般公開が行われている。
ドリス・デュークは、さらなるイスラム芸術と文化の研究の発展、また、多くの人にそのすばらしさを理解してほしいと願い、彼女の遺言状にドリス・デュー ク・イスラム芸術財団Doris Duke Foundation for Islamic Art (DDFIA)の設立を記したのである。
■いよいよツアー参加
ツアーは日2回行われており、今回は午前11時から午後1時30分のツアーに参加した。(シャングリラにおけるツアー時間は約1時間30分)Wardアベ ニューとKingストリートの角にあるホノルル・アカデミー・オブ・アーツにてシャングリラ及びドリス・デュークに関するビデオを10分ほど鑑賞した後、 ミニバス2台にてダイヤモンド・ヘッドの一等地に位置するデューク邸・「シャングリラ」へと出発する。
今回のツアーで見学することができた施設内の部屋は以下のとおり。
Entry Courtyard
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Mughal Garden
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Stairway & Foyer
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Turkish Rooms
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Central Courtyard
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Living Room
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Mihrab Room & Library
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Dining Room & Lanai
敷 地入り口から緑あふれるなだらかな小道を下りデューク邸玄関中庭へと車を進める。真っ白い壁に重厚な銅製の扉の建物が目の前に現れた。左右に2頭のラクダ の像を伴った入り口玄関の扉には、イスラムの経典、コーランから引用され、次のように碑文されていた、「Welcome & Security of privacy」。重厚な扉はエキゾチックな様子ではあるが、このあまりにもシンプルな佇まいの外観の向こうにドリス・デュークのイスラム芸術に対する情 熱と愛情が込められた「シャングリラ」の世界が広がっていることなど想像できるだろうか。玄関扉の左右に位置している座位のラクダの像2頭(18世紀)は 中国の美術品とのことで、イスラム文化・芸術が様々な異なった文化の影響を受けていることを再認識する。■ムガル・ガーデン(Mughal Garden)
プ ライベートライフを守るために設けた庭へとつながる小路。プライベートライフとパブリックライフの区別を強く意識していたドリス・デュークはこのムガル・ ガーデンを上手く利用することでゲストを自身の邸宅に招き入れた。ゲストが彼女のプライベート・ライフ・スペースに立ち入ることなく、そしてゲストに彼女 の意図を悟られることなくパブリックスペースに招き入れるためにデザインしたものである。招き入れられたゲストは、どのような気持ちで目の前に続く大理 石、水辺、そして小さな噴水を多く使用し、白を基調とした小道を進んだのであろう。青い空、周りの緑とのバランスも絶妙である。■玄関ロビー(Stairway & Foyer)
扉に刻まれた「Welcome & Security of privacy」の意味を心に留めつつ、いよいよ、ドリス・デュークのシャングリラの世界に足を踏み入れた。カラフルなガラス窓から差し込む光と数多くの イスラム芸術品に圧倒され、思わず息を呑む。モロッコ調の天井、600枚からなるトルコ・タイル、スペイン・スタイルの窓の数々がロビー全体に広がる。中 でもベニスで購入されたといわれている600枚のタイルが張られた壁に注目した。全てが同じデザインではなくその柄はタイルの組み合わせによって全体的な デザインにつながりを見せている。有名な美術館などでは2〜3枚程度しか展示されていないものだというが、ここでは600枚ものシリーズのタイルが存在す るのだ。まさに圧巻である。このロビーは、様々な文化を取り入れ、それらをイスラム文化として融合させたという意味で「シャングリラ」の中でも象徴的な部 屋だという。この建物が建造された1930年代後半にこのようなデザイン、美術・芸術品をあしらった建物はいったいどのくらい存在していたのだろうか。
■ トルコ様式の部屋(Turkish Rooms)
ゲストを招いて小規模なディナーパーティなど特別な行事を催す際に使用された部屋。ドリス・デュークはこの部屋に立ち寄っては部屋の模様替え、美術品の配 置転換などに思いをめぐらせていたという。この部屋は本来ビリヤード台をおいた遊戯室、化粧室、執務室等などであったが大規模な内装工事を行い、トルコ及 びシリア文化圏を中心とした陶器及び美術品を装飾した部屋へと生まれ変わることになった。床、壁、天井に至るまで装飾が施されているが、統一感があり、嫌 味やうるささなどを感じさせないあたりは、ドリス・デュークという人の感性の良さと、何よりも、決して富をひけらかさない彼女の人柄が表れているのかもし れない。
■中央中庭(Central Courtyard)
プライベート・ライフを大切にすることを何よりも重要視したドリス・デュークは、中庭をつくることで、建物をパブリックスペースとプライベートスペースに 仕切り、ゲストは、玄関ロビー、リビングルーム、ゲスト用に作られたトルコ様式の部屋へと通され、プライベートスペースである寝室やキッチンなどにはアク セスしない造りになっていた。この中庭の目的は中央のガーデンではなく、むしろ、イランからもたらされた陶器や幾何学模様のタイルを飾るスペースを設ける ことであった。なかでも目を引くのは、この中庭の壁を飾るべくシャングリラが建設された直後の1938年、イランのモザイクタイル職人に製作を依頼した巨 大なモザイク・タイルである。このデザインは17世紀に作られた2枚のパネルが原型になっているという。中庭の床石には、ハワイで採掘されたコーラルサンドが敷き詰められている。遥か何万マイル離れたイスラム諸国からもたらした芸術品や何百年の時を越えた美 術品の数々だけではなく、ハワイの海底から採掘した岩を使うことによって、ここでもシャングリラはハワイの自然と見事に融合している。
また、中庭の壁に設けられた陶製アーチ型のミフラーブはイスラムの聖地、メッカの方角を向いている。このミフラーブとは、聖地メッカに向かってイスラムの 神アッラーへの祈りを捧げる方向を示すものである。このミフラーブにはコーランの一説が碑文されている。この陶製のアーチ型ミフラーブは19世紀もしくは 20世紀のもので、1975年に購入したものである。
■リビングルーム(Living Room)
天井が高く、広いということだけでなく、今から60年以上も前に造られたこの部屋には驚くような仕掛けがあった。明るい日の光を取り込む大きな窓にその仕 掛けがある。その大きな窓は一般的に使用されているような左右にスライドして開閉するものではない。スイッチ一つで大きな窓が上下し、開けた状態では、窓 全体が床下に収まり、床との境目がなくなるのである。今でいう「バリアフリー」状態である。窓全体がまるで大きなフレームのように美しいハワイの自然を映 し出す。目の前にはプールやバレエレッスンなどをするために造られたプレイハウスなどが見える。
ドリス・デュークは、1993年に他界する直前までこの家で過ごし、十頭以上の犬たちとともに生活していた。犬たちを自分の子供のようにかわいがってい た。日中、窓を足の高さくらいまで閉めて、犬を外で遊ばせ、夕方には、犬を部屋の中に入れて再び足の高さまで窓を閉めたという。つまり、日中は犬を外で十 分に遊ばせ、また夜は安全を考えて部屋のなかに入れていた。自分が家を留守にするときには世話係の者に、この「子供たち」の世話を頼んだという。
も う一つ目を引いたのは、彫刻を施した木製のスクリーン、「ポケット・ドア」である。これは、ガラス窓の内側にある飾り引き戸タイプのスクリーンで、閉める と細かな彫刻を施した木製のスクリーンごしにわずかな日の光を取り込み、また、スクリーンを完全に開けると、側面につくられた戸袋に完全に収納されて、ま ぶしい日の光が差し込む。彫刻を施した木製のスクリーンを閉めている際と、スクリーンを収納している際とでは部屋全体の表情がまったく違ってみえるのであ る。。この点においても、この建物は単なる住まいとしての家ではなく、芸術的センスと遊び心を随所に垣間見ることができるまさにドリス・デュークの「シャングリラ」なのである。
リビングルームの外には緑あふれる中庭があり、ダイヤモンドヘッドを背景に海水を使ったプール、プレイハウスなどを当時日常的に使用していた景色が広が る。実際に屋外に出てその絶景を楽しむこともできる。
■ミフラーブの間&ライブラリー(Mihrab Room & Library)
ミフラーブの間はリビングルームからダイニングルームへの連絡通路、つまり廊下である。この部屋はイラン製のラスター陶磁器、ヴェラミン ミフラーブ、モ ノクローム・ターコイズとラスタータイルなど等を配置しており、伝統的なイランの王朝スタイルをイメージして造られたといわれている。またこの部屋の向こ うには、イスラム、インド芸術、建築に関する書籍、オークションカタログ、小説などの書籍あわせて600冊以上を有するライブラリーがある。
■ダイニングルーム&ラナイ(Dining Room & Lanai)
ハワイのマリン・ライフをモチーフにデザインされたこの部屋は、1960年代ドリス・デュークが50歳代の頃、まったく異なった様式のダイニングルームへ と改装された。美しく広大な海やダイヤモンドヘッドの絶景をのぞむ窓はそのままに、水槽や貝殻のコレクションは巨大なモザイクパネル、バカラ社のシャンデ リア、そして暖炉のある部屋へと変更された。
ダイニングルームはエジプト及びインドの刺繍品や目にも鮮やかな青を基調とした布地を部屋の壁、天井に張り巡らせた、いわばテントのようなデザインであ る。テントを張り、生活を続けるイスラムの遊牧民的なライフ・スタイルをイメージしたといわれている。リビングルームはつい最近、壁や天井に張られていた 布地を張り替えたということでとても鮮やかな青が印象的で、そのテントというイメージがよく表現されていた。イスラム文化・芸術という大きなテーマは変わ らないものの、各部屋毎に彼女の芸術的センスと遊び心の豊かさに感心してしまう。この部屋でとりわけ目を引くのは天井からつられている大きなシャンデリア である。バカラ社がインドに輸出する目的で作られたが、1966年にドリス・デュークが著名なインドのコレクターから購入したものである。
壁、天井にテントのように布地を張り巡らせたこの部屋の大きな窓の向こうには、ラナイがありラナイの向こうには、ターコイズ・ブルーの海が広がっている。 遊牧民のテントというイメージと、その外に広がる青い海と空がミスマッチのようだが、鮮やかな青を基調とした部屋、美しく輝くシャンデリア、そして青い海 が見事に調和しているように感じた。
ツアー中、ラナイではペットボトルの水が配られ、ラナイから見下ろす景色をしばし堪能できる。この他に、サービス・ウイング及びキッチン、ダマスカスルーム、プライベートホール&ラナイ、モロッカンルーム、ベッドルーム&バスルーム、さらにプレイ ハウス等の部屋・建物等があるが、随時改装中ということもあり、今回のツアーではそれらを見学することはできなかった。改装の期間によっては、ツアーの内 容が異なる可能性もあるようだ。イスラム文化・芸術、そしてドリス・デュークという人間に関しても詳しい知識をもつドーセントがとても親切に、時には熱狂 的なイスラム芸術ファンから寄せられる多くの質問にも明解に、そして快く答えている姿がとても印象的であった。ツアー終了後は、来たときと同じようにミニ バスに乗り、ホノルル・アカデミー・オブ・アーツへとシャングリラを後にした。ツアーは約2時間半のコースである。
感想
ドリス・デュークという女性は、生涯を通してとてつもない豊かさに恵まれた人に留まらず、その富、時間、知識、そして情熱をイスラム芸術品の収集と保存に 費やした。シンプルな玄関中庭の外見、一方、内装、装飾品、美術品はどれをとっても贅沢の粋を極めた品々からは、イスラム芸術に対する彼女の尊敬の念、情 熱そして、愛情の深さが伝わってくる。異なる文化や芸術に尊敬と関心を持っていたドリス・デュークは、将来、「彼女のシャングリラ」が教育的価値が高い重 要な遺産になることをも予知していたのであろう。最後に印象に残ったことは、シャングリラは、決して富をひけらかすためのものではなく、ドリス・デューク のイスラム芸術に対する真の情熱が残る理想郷であった。
住所: 4055 Papu Circle, Honolulu, HI
ウエブサイト:http://www.honoluluacademy.org/index.html
ツアー: ドーセント(ガイド)によるツアー 水曜日〜土曜日(1日2回)要予約
ツアー予約電話番号: 国際電話1 (866) 385-3849; オアフ島内 (808) 532-3853 .
ツアー参加料金: $25(一般)$20(ハワイ州居住者及びハワイ州運転免許所有者)
なお、ツアー料金にはホノルル・アカデミー・オブ・アーツとドリス・デューク邸間の車両送迎費用を含む。



