「自分で集めたものがものすごく良く見えた」
─ジョン・メイグスの作品でもそうですけど、小林さんのこだわりは染めにあるのですか。
■小林:結 局染め云々っていうのは要するに生地屋さんの問題なんでそれは僕がこだわっている部分なんですけど、ジョン・メイグスはデザイナーなんで彼の絵とか作風と かなんですね。それをどういう風に料理するのかって言うのは、デザイナーの先に生地屋さんのデザイナーがいるんですよテキスタイルデザイナー。彼等が判断 して色もつけるんですよ。
─そうすると、そのこだわりって言うのは小林さんのこだわり?
■小林:当時日本と、アメリカのニューヨークのテキスタイルメーカーがアロハシャツの生地を供給してたんですね。それを調べていて日本で作っていたという実績をよみがえらせたいというか。
まあ、アロハシャツの最初に虜になったきっかけと言うのは、僕は最初アロハシャツをよく知らなかったし興味なかったのですけど、この業界に入って、アロハ シャツって言うジャンルがあって、古着として取り扱われている。その中で価値がある物って誰が判断したかわからないけれど、古ければいいっていう風潮が あったんですよ。
だけれど、僕は最初あんまり好きじゃなかったんですね、正直な所。その当時ヨーロッパなんかの評価では、一生二度と評価される事の無いのがアロハシャツだ ろうってくらいファッションでは逆行した商品、下品な洋服のトップにランキングされていたんです。
ただ、アメリカの中で夏の風物詩として毎年毎年出てくるので、僕の仕事柄作らなくちゃいけない。それでアロハシャツの資料を集めてたんですよ。アメリカに 資料の買い付けに行って、ウェアハウスって言ってボロ着屋さんの中に入って何十万枚ってあるシャツの中から自分の気に入った柄をピックアップするんです よ。
そうしたら、ピックアップした物にみんななにか共通点があるんですよ。一つはレーヨンって言う素材感。同じレーヨンのアロハシャツで同じようなハイビスカ スの柄や、同じような和柄であってもなんか違うんですよ。自分で集めた物がものすごくよく見えたんです。それが何故かをどうしても知りたくて、その良さを 知るために糸とか染め方を全部調べたんです。そうしたら本当に大きな違いが、素材と染め方っていうのが安物のチープなアロハシャツと、今で言うビンテージ と言われてる物の違いが明確に解ったんです。それが解って日本に帰って来て、全く同じような物を作ろうと思ったら出来ないって言われて。
何で出来ないかっていったら、結局非常に難しくてリスクが大きい。今日本のメーカーは誰もリスクはおわない。しかも高い。『アロハシャツって安物だろ。安 物にこんな高い生地は使えない』っていう答えが返って来た。じゃあ、全く出来ないわけじゃない、可能性はあるんじゃない、と。ただ値段の問題とかリスクの 問題、ロットの問題で作れない。じゃあ、俺が責任とるから作ってくれ、と言って初めてできたんです。
こういう一連のことが最初のきっかけで。こだわりですね。それがやっぱり一言で物を比べた時に簡単に説明できないんですよ。同じ赤い、同じハイビスカスのアロハシャツで全く同じように見えるんだけど、素材と染め方が違うとまったくクオリティーが違ってしまうんですね。
簡単に言うと、版画って言うんですかね、焼き物とプリントの違いって言うのかな。普通は色を重ねて刷って行く。これがプリントですよね。色と色が当然重な りますよね。
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| オーバープリント | 抜染 |
重 なった所は汚くなる。だけど、昔のディスチャージプリントって僕は言うんですけど、抜染と言う方法は、地色を染めた布の色を部分的に抜いてそこに他の色を 染めていく、色を抜きさししてる訳ですよ。だから一回染めた生地は中まで赤なら赤なんですね。そこに例えば白とか黄色とか、濃い色の上に普通明るい色は乗 らないじゃないですか。それを乗せるために赤い色を抜いちゃってそこに新しい色をさしてるんです。要するに七宝みたいな物で色と色が重なりあわないんです よ。だから、くっきりきれいに見えるんですよ。しかも染料が繊維全体に浸透しているんで、ものすごく鮮やかな色を発色するんですよ。だけどオーバープリン トって言うのはどうしても白い生地の上にだけ乗ってるじゃないですか。色と色がどうしても重なるんですよ。汚く濁る。そしてピンボケになっている。それが 大きな違いで、全く変わってしまうんです。そこにはこだわりましたね。
「沢山ある中で自分の一枚を見つけるのが楽しい」
─サンサーフで毎年新しいコレクションやビンテージの復活など新しい物が出ますが、その柄の選択と言うか、このデザインを今年はやるぞという基準は何ですか?
■小林:僕の会社は小さいですし、大量に作っても売り場が無いんです。量販店は全然やってないんで。ある一定のお客様を満足させればいいって言うのがあるので、できるだけ沢山作るのはやめようと、ロットって言うのはどうしてもあるんですけど、最少ロットで行こうと思っています。
売れるようになれば柄数を増やせばいいや、と単純に。5柄しか売れなければ5柄作って、オーダーがもっと来たら10柄作ればいいやって。そうすれば買う方 も沢山の中から選べるじゃない。基本的には僕は古着屋さんを回って資料を集めたり、コレクションする時に、どういう状況が一番欲しくなるのか、よく見える のかって考えるとやっぱり沢山ある中で自分の一枚を見つけるのが楽しいんで、同じ柄がいっぱい積んであっても欲しくないなっていうのがあったんです。
できるだけ沢山の柄を提供しようと思って。
1500とか2000とかっていう数のアロハシャツを集めているんですけど、それを作り続けても一生作れるという余裕もあるし。
だったらなるべく沢山いろんな柄を出して皆にみてもらった方がいいんじゃないかなっていうのがあって。基本的には自分がいいな、と思う順番で出してたんで すよ。
─自分のコレクションの中から気に入ってる順番に出していっている?
■小林:ベスト10で最初出してたんですよ。そうやって行くとだんだんだんだんいい物が限られてくるのであんまり良くない物が残ると思うでしょ。ところが違うんですよ。
それはね、確かに良くない物といい物ってあるんですけど、そのシーズンそのシーズンで自分なりにやっぱり世の中の動向だとか、流行りだとか、風潮だとかっ て言うのが体に入ってくると、良く見える物が変わってくるんですよ。
─それはファッションですよね!
■小林:そ うなんですね。おそらく、解らないですけど、戦前から50年代終わりって言っていますが、実際60年代くらいまでは、アロハシャツをいろんなデザイナーが 作り続けた中でね、気候の変化が少ないハワイとはいえ、世の中の流れとか流行りとかがあって、その当時に柄の大きさが大きくなったりちっちゃくなったり、 モチーフが変わったり色目が変わったりもしたんですね。それが微妙にあって、去年までやたら黄色いアロハが気になっていたのに、今年はどうもグリーンがい いなって言うのがものすごくあって。その本能に合わせて、それで8割方はリクエストです。お客さんからハガキが来るんですね。あれが欲しい、これが欲し いって言うリクエストを全部集計して。そのベスト10みたいな物を割り出して。その中で自分なりの感性で.去年はこれをやったから今年はこれをやろう、と いうので決めて行きます。
─カラーリングにいくつかバリエーションありますけどそれはオリジナル?
■小林:基本的には全部オリジナルがあるんですよ。
─オリジナルがあるんですか。それは全部文献的などを調べて?
■小林:そ うですね。異常なまでに僕は収集癖がありまして。全部知っているわけじゃないんですけど。いろんなコレクターがいるじゃないですか。インターネットのホー ムページなどを毎日全部見るんですよ。そうすると必ず今まで見た事無い柄とか色とか、柄は持っているんだけど持ってない配色とかあるんですよ。それを全部 プリントアウトしてファイルして取っておくんですよ。あとはカメハメハブランドとか、デュークカハナモクブランドとか、キロハナブランドとか大きな所の ピースウォッチっていうのがあって端布で見つけてとっておくんですよ。カメハメハブランドは全ての柄の全ての配色を持っているんですよ。生地はぼろぼろで すけどね、工場で裁断したやつを。なんで、まったく同じ色を再現できるんですよ。
─とてつも無い分量の資料というか…。
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資料一部
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■小林:そうですね。それは資料だけで、はしきれなんですけど。柄別に分けて約300から400柄くらい。配色が段ボールに3箱くらい。それを売ろうかな、と思った事もあるんですけど『生地のきれっぱし買うやついないよな』、と。一回額に入れて売った事もあったんですよ。
─いいですね、それは。
■小林:ちゃ んとバードオブパラダイス&プルメリアとか。すごくきれいで、アンセリウムのボーダーのね、カメハメハで一番人気のある柄があるんですよ。その端布なんか も見事に額にピッと入るくらいの大きさで残っていて、各色あってそこにカメハメハプリントにパラダイス&プリントの字があって、それをコアウッドの額に入 れて10枚くらい作って店で置いてね、2年くらい売れなかったんですけど全部売り切れましたよ。面倒くさいから作るのやめた。自分で作らなきゃいけないん で。
─今度また作ってくださいよ。きっと欲しがる人、たくさんいますよ。
■小林:そうですね。他にも当時のデットストックのラベル、アロハシャツのラベルなんかもいっぱい持っているんですよ。そういうのを額の中に、その生地を題材にしてその上にラベルを並べて行くんですよ。五千円くらいで売ってたんですけど。
─すごいうらやましいよね。
■小林:コレクターから見たら本当は何万もする価値があるんですよ。それに今ではコアもあまり採れないんで。
─2005年、これは目玉だっていうのはありますか?
■小林:そうですね。レギュラーのアロハシャツは基本どおりで。ずっと和柄が人気があったんですけど今回はそのほかと五分五分になって来たかなって感じがしますね。
プリモのアロハシャツ、けっこうプリモの復刻だとか、あとドン・ブランディングっていう、ハワイの小説家なんですけど。ハワイのウォールトディズニーって 人がいますけど。その人のデザイン、テキスタイルでコットンのシャツですとか。まあ、どっちかっていうとビンテージでハワイアンって言う流れは継続してる んですけど。今のハワイって言うのも少しずつ取り入れながら、コットンのシャツも少しずつ増やして行ってるんですね。
─プリモとかユニフォーム的な物っていう感じですね。
■小林:そうですね。プリモなんかもコレクターがいるんですよ。プリモでも当たり前に分かりやすいプリモっていう、そうじゃないデザインもあるのでプリモシリーズっていうのも面白いかなと思っています。
─ケオニオブハワイにも何か新しい物は?
■小林:ケオニはいま、まあ、これは5月になってからのお楽しみなんですが、すごい作家に頼んでいるんですよ、二人ほど。
─それは日本の作家?
■小林:今回はね、二人とも日本なんですよね。相反するというか。一人は本当に、デザイナーとしたら一番トップレベルっていうぐらいのデザイナーで。一人はデザイナーというよりは職人という。その世界でトップっていう人に頼んでます。アッと驚くような。
テーマみたいなのはね、もともと反逆みたいなのがあって。僕らカジュアルっていうのは、ある意味正装とはかけ離れていて。どっちかと言えば遊びの服とか不 良の洋服とか言われるじゃないですか。アロハシャツって言うのももともとチンピラのシャツっていうイメージだったでしょ?それ以外にも、うちはスカジャン とかも作っていたんですけど、そのものがヤクザとかチンピラっていうイメージがあって、昔は特殊な人しか着なかったし、嫌われていた。
それを歴史を探ったり、背景を探ったりしながら僕らでどうにか普通の人たちが着れるように持って来たと思うんですよ。
そこを今度は…まあ、ここまで来たら一つはばらしますが。一人は三代目彫芳。入れ墨の一流ですね。彼は世界で一番認められている彫り師なんですね。
70くらいの人なんですけど。入れ墨っていうのはヤクザかっていうのは、アロハシャツってチンピラのシャツっていうのと同じなんですね。海外に行くと、印 刷物の中に入れ墨の写真とかデザインってすごく多いんですね。日本を表す代表的なデザイン、オリエンタルなデザインイコール入れ墨みたいなのがあって。
ヤクザっていうのも日本で聞くヤクザと外人が考えてるマフィアみたいなヤクザっていうのは全く感覚が違って、かっこいい物に見えるんですよ。
それで入れ墨はヤクザがしているけどデザインとしては切り離して考えた時に、日本を代表するオリエンタルなデザインと考えた時に、その魅力だけを表現でき ないかなと考えたんですね。
僕も入れ墨は興味があって魅力的だなと思うんだけど、やっぱり育ちがいいせいか(笑い)自分で入れるには恐いし、抵抗があるんですね。だから入れ墨は入れ てないんですけど(笑い)。
入れてみた感覚は味わってみたいし、入れ墨っていうのは体に入れる以上中途半端に、いい加減には出来ないっていうのがあるじゃないですか。アロハシャツの デザインに乗せると疑似体験ができるんじゃないかと思って。
外人が見た時にオリエンタルって意味では一番オリジナリティーがあって今の日本の分かりやすいモチーフじゃないかなと思って頼みに行ったんですよ。
その彫芳さんていう人が人間ができてる人で、その人はヤクザじゃないんですね。自分は彫り師だ、職人なんだと。芸術家じゃないんだという。彫り師というの は世界一大変な職業なんだよっていう。ミスは許されない、相手が悪くても自分のミスになってしまう。痛くて体を動かして失敗しても自分の責任になってしま う。だから、その痛みも解らなければいけないし、失敗は許されない。
す ごい重労働なんだっていう話を聞きながらね、アロハシャツにデザインを使わせてもらえませんか、って頼みに行ったんですよ。そうしたら見事にうちのために 書き下ろしてくれたんですよ。ケオニブランドとすればね、それがイコールヤクザと見られないで優れた日本のオリエンタルデザインとして表現できるかどうか が今度のケオニの一つの妙技です。当然入れ墨を彫っている彫芳さんの写真も一緒に飾りますけどね。ヤクザじゃない、その入れ墨をアートとして感じてくれれ ばな、と。まあそんな事ばっかり考えてるんですよ。
─アロハの着方なのですが、片岡義男さんが本に書いていて、アロハは風を着る物だから中にTシャツなんか着ちゃいけないんだ、と。素肌に着るのがアロハなんだ、なんて書いてあってね。なんとなしにそういうイメージがを持ってしまっているのですが?
■小林:そ れもありますよね。いろんなコレクターにはそれなりに着方や楽しみ方があって。極端な話では冷蔵庫に入れてしまっているっていう人もいるし。ハワイに住ん でて冷蔵庫にアロハシャツを保管してて、朝起き抜けにその冷たいアロハシャツを素肌に着るっていうのが快感だって言うコレクターもいますしね。そのための 貯蔵庫みたいなのを造った人もいるし。逆に例えばカリフォルニアに住んでいる人たちは、やっぱり当時からハワイが憧れで、いつもハワイにいれる感覚でアロ ハを着たい。だけど寒いから、例えばロンTの上にアロハを羽織るっていう着方も存在しているし。それはケースバイケースですよね。
僕なんかもそれは、はおる時は素肌の方がいいと思うんですね。気持ちがいいのが伝わるから。ただやっぱり湿気が多いから、どうしても梅雨時は汗ばんだりぐ ずついたりするのでTシャツの上に着てもいいと思うし。もう本当に人それぞれじゃないかな、と思いますけどね。
ただ、大きいアロハと小さいアロハっていうのがあって。ショートパンツを履く時はでかいアロハが似合うんですよ。で、ジーンズ履く時は小さいアロハが似合 うんですよ。これはね、万人に共通してるんでね、注意した方がいいんですよ。ジーンズはいててでかいアロハ着てるとかっこ悪いんですよ。それこそチンピラ に見えちゃう。で逆にショートパンツにちっちゃいアロハ着てるとやっぱりばかに見えますね。
─そうすると気に入ったアロハはパンツに合わせてサイズは2種類買うとよさそうですね。
■小林:街の着こなし方と島の着こなし方は違うでしょうね。
特にリゾートで着る時はショートパンツが多いじゃないですか。ハワイなんかそうでしょ?沖縄の方でも一枚だぶって羽織るってのが一番リラックスして着れる し。見た目もきれいでしょ、シルエットがね。逆に街で着る時っていうのはジーンズとかチノパンとかの方が多いじゃないですか。そうすると小さめの物を身に 付けた方がきれいに見える。
─最後に全然違う質問させてください。ハワイに年中仕事でいらっしゃると思いますが、ここだけは行くぞ、ここだけは行ったら食べるぞ、というところはありますか?
■小林:そ うですねえ。まあ、オアフは必ず入りますけど。ハワイ島マウイ島とオアフ、だいたい同じくらいですかね、比率的にはね。マウイ島にはジョン・セバーソンが 住んでいるんで。彼のアロハシャツもケオニからスタートしたんですけれども。世界で一番偉大なプロサーファーなんですよ。サーフィンを作った人ですから ね。彼のアトリエがマウイにあるので必ずマウイには訪れますし。ビックアイランドは回らなきゃ行けないので必ず行きます。だいたい、必ずヒロからコナ、コ ナからヒロって行きますね。
毎 回地元の人にどっか連れて行ってもらっています、食べる物はね。自分で探した所はおいしくないから。地元の人の方がおいしい所知ってるんですよ。そういう 所に連れて行ってもらって食べますよね。食に関しては。本当においしいのは地元の人の家でバーベキューしたりするのが本当においしいですね。観光にはあま り行かないから観光スポットみたいなのはよくは知らないんですよ、意外に、一人で行ったりするでしょ。だから相手の女もいないし、黄昏れてる時間なんです よ、夜って。意外に飯食った後なんかはね。だからホテルの部屋にいるのはいやなんでね。わりとホテルのプールとか、夜入れる所があるんですよ。そういう所 がいいかな。人がいないんですよ全然。全然いないし、ライトアップされたプールの中で酒飲みながらジャグジーかなんか入ってると一番ハワイではいい所か なって感じがしますね。
─長いことありがとうございました。
(2004年12月16日 東洋エンタープライズにて)
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