寒い冬の東京、「Deep Hawaii」というコンセプトで五野マサヒロさんの個展が開催されました。日本人でありながら、アメリカっぽいイメージの大胆な色づかいやPOPな作品 は、見る人をワクワクとHAPPYな気持ちにさせてくれます。グラフィック、オブジェそして映像などのART作品を通して、ハワイの大自然やライフスタイ ルの素晴らしさを伝えてくれるアートの数々を拝見し、作品を作るようになった経緯やテーマなどをお伺いしました。

五野マサヒロ:東京で生まれ育ち、幼いころから祖父母が暮す茅ヶ崎で週末を過ごしており、湘南の「海」を通じ幼い頃からサーフカルチャーに興味を持ち、 バーバリアンズサーフィンクラブの叔父の影響でサーフィンの洗礼を受け1970年代中頃より本格的にサーフィンを始めました。
1976年冬に当時13才の少年が観たあの一本のサーフムービー「Many Classic Moments」が衝撃的に彼の心に響きフィルムの舞台でもあった「ハワイ」に強烈に引かれたようです。
それ以来、彼の感じた世界感でハワイの風土や人物そして自然などを捕らえPOPアート・イラストレ−ションとしてサーフカルチャー・メッセージを送り続け ています。現在では幼馴染みの友人がホノルルで設立した会社とコラボレーションし東京とホノルルに拠点を持ち活動を続けてます。
(ハドウインクルード homepageより転載)
http://www.hadowin.com/

「自然の豊かさを表現」

─ハワイをテーマにした絵を描き始めたきっかけを教えてもらえますか?
五野:も ともと絵を描くことが大好きで、絵を描くこととはまた別にハワイも大好きだったんです。会社勤めをしている時には、じっくりと絵を描く時間はなかなか取れ なかったということもあって、特に作品という事を意識して描いてはいなかったんだけど、独立して仕事をするようになってからは、ある程度絵を描くための時 間を持てるようになったこと、あと、ビジネスパートナーがハワイに移住したこともあって、ハワイとの関係が今まで以上に濃厚になったこと、そんなことが重 なって、ハワイから受けるいろいろな感覚を何かで残したいな、と思ったのが本格的に絵を描き始めたきっかけのひとつでしょうか。

しかし、絵を描き始めてみて、出来上がった作品と自分のイメージとのギャップがあって、なかなかしっくりとこなかったのです。そんな時にふと、ハワイを感 じる何かをいろんな人に伝えてみたいと思っていても、漠然としていては上手に表現できないと気づき、そしてその何かとは何なんだ?を考えた時に、自分なり に感じる、とても心地良いハワイの風景、風、香りといった、たわいないあたりまえの光景では、と思ったんです。と同時に改めてハワイの自然の豊かさと雄大 さを再確認し、それこそが僕が求めていたイメージではないかと思い、現在のアート作品のテーマ“ネイチャー=自然の豊かさ”、そしてその象徴としてのハワ イに行きついたのです。
自分にとって大好きなことだから、というすごくわかりやすいコンセプトでもありますね。
都会で荒れた心を癒すにはハワイの豊かさの中にヒントが隠されている気がして、時間の流れとか生き方とか、そういうものを自分なりに切り取って、それを絵 にしたいと思ったんです。

─作品に描かれているのは、実際にハワイにある場所なのですか?
五野:今見えている風景をそのまま写すのではなくて、自分の心の中から浮かんできたものもたくさん絵の中にあるんです。
その時感じたインスピレーションで描いたものは本物というのか、現実というものとは違っているけど、現実のものをリアルに写すより自分の中から生まれたも のを描きたいと思っています。


例えば”SUNSET”という作品では、美しい夕日のシーンに、いろんな昔の思い出が重なってこの絵になった。ハワイにいる時にはラフな感じでスケッチを したりしています。それで、ホテルの部屋とか、日本に帰ってきてからとか、描いたスケッチを見ていて、急に頭にいろいろ浮かんできて一気に描き上げること なんかもけっこうありますね。
向こうでチャンネルが切り替わったことで、日本では思いつかないことが感じられる。もちろん逆のこと、ハワイでは思いつかないことを日本で感じたり。そう いう、自分の心の中とか昔の思い出とか、ほんとにいろんなことがハワイの風景と重なって1枚の絵になっているんです。

─サーフィンが題材になった作品も多いですよね?
五野:小 さい頃から祖父母のいる茅ヶ崎で週末を過ごしてて、シェイパーをしていたおじさんの影響もあって、サーフカルチャーを肌で感じていたんでしょうね。物心着 いた頃、おじさんと海に行くと、おじさんのボードのスケッグに捕まって沖まで行って、浮き輪でプカプカ浮いて待っていたり。
そんなバックボーンがあることも、サーフィンを題材にした絵を画く大きな理由のひとつかな。
当時の茅ヶ崎って、その昔、別荘地だったせいもあって、地元と東京の文化が混ざった特有の文化があって、僕の中でハワイと同じ匂いがしたんですよね。

 

─なぜ、「ハワイ」だったのでしょうか、「日本」ではないのはなぜ?
五野:サーフィンや海を通じて、自然や時間を捉えた感性がハワイの風土とさらに調和して、今は自分にとってはハワイでなくちゃいけないんだと思う。目には映らない空気感や生き方に非常に惹かれているんですよね。
何というか、ハワイには全世界のカルチャーを包み込む見えない力みたいなものを感じるんです。それが描かせる原点になっているのかな。
ハワイには混ざり合った文化、特に日系人の文化があるせいか、他の外国の国と比べても、どこよりも心地よく自分にはフィットする気がするんです。
もしかしたら、アロハという言葉にはぼくらの祖先のDNAが入っているのかなと思う位、ルーツの部分で繋がっているのを感じるんです。それは理屈では説明 できない部分なんですけど。
大昔ハワイに渡った人達は日本人と同じ祖先とも言われるところや、日本人の根にもともとある自然信仰という部分からも、日本人にはDNAが呼び合う部分が あるのかもしれないですね。


「ハワイの“風”を伝えたい」

─アートで伝えたいことは?
五野:ハワイの風を皆さんに伝えたい。あの空気感、生き方。あせって生きるのではなく、大自然とリズムを合わせた融合。それがすごい魅力だと思っているんです。そういうハワイにしかない自然やカルチャーがたくさんあるから。


そんな自分の感じたハワイっていうものを、いろんな人に伝えたいという素朴な思いを強く持っています。
今回、個展を開いてみて、ハワイを少しでも知っている人には、イメージをインスパイアして共感してもらえたのがすごくよくわかった気がするんです。その事 がとても嬉しかったし。反面、ハワイへ行ったことのない人に、自分の思いをどう届けるかが難しい課題なのかな、という事も感じています。全員にわかっても らうのは非常に難しいんだけど、ハワイによく行く人にも、行ったことのない人にも、「あー、これ、ハワイだよね」というような事を伝えられるようになりた いですね。それと、ハワイに行かない時に僕の絵を見て、日常の中で束の間ほっとして、ハワイの匂いを感じて、普段の生活が少しでも豊になるきっかけになれ ば素敵ですね。


アートの役割は理屈をこねなくても伝わる、言葉が通じなくてもわかり合える”第二の言語”ということ、アートと音楽は今後もっと大きな役割を担っていくと 思うんですね。
例えば、ハワイでスケッチしていたりすると、現地の人に、「何描いてるの?」と聞かれたりしてそこからコミュニケーションが生まれたり。言葉が通じなくて も、不思議と心が通じ合ったような。そんなツールとしても、アートの役割っていうのは、すごくわかりやすくておもしろいんじゃないかと。


─作品のなかのキャラクターについてお話してもらえますか?
五野:”ディープハワイフレンズ”っていうキャラクターなんだけど、ぼくが自然を通じて見たハワイの楽しい部分をキャラクターに落として描いているんです。
もうひとつはもう少しリアルなサーフカルチャーから切り取った風景などのディープなシーン。
ハワイでは自然と一体化するサーフィンというスポーツがライフスタイルの中に入っていますよね。アートはそんな感覚をサーフィンをしない人にも感じさせる 手段のひとつと考えているんです。切り取った「時」を平面でどう伝えるかと考えた時に、こういう作品が生まれたんです。

 

「日本での日常の中でも、アートでハワイを感じて欲しい」

─今後の活動の展開は?
五野:今回の個展で、色んなモヤモヤしていたものがひとつの形になりました。
ぼくが考えているハワイの良さに共感してくれる人が沢山いるということがダイレクトに伝わってきて、非常にプラスになりました。
この個展での経験や出会いを大切にして、おもしろく展開していきたいと思っています。
今後は、絵を描く他に、日常の中でのアートによってハワイを感じるような生活用品などを作っていきたいですね。
個展もまた開く予定になっていて、六本木ハートランドでの企画を進めています。また、ハワイアンアートギャラリー、イギリスのSOLギャラリーでも販売す ることが決まりました。
キャラクターも、ぼくの心の中にまだまだたくさんいるので、いろんな「仲間」を増やしていきたいですね。

ストーリーがついて、絵本になったら楽しいでしょうね!
五野:そうなんですよ、絵本も作りたいと思っているんですよ。

─最後に、皆さんにお伺いしているのですが、ハワイで好きなところ、必ず行くところはどこですか?
五野:そうですね、たくさんあるんだけど、例えば、ハワイカイの辺、すごく好きですね。
ココマリーナS.C.のスターバックスの前に高校生が溜まっている3時位から夕方にかけての時間帯が好きなんです。自分の高校時代がフラッシュバックする ような感じで。
ホテルでは、石の外観が魅力的なハワイアナホテルが一番好き。
ハワイアナホテルのプールサイドで描いた作品もありますし。


─絵本も是非作ってください。これからもいろいろな作品を楽しみにしています。
どうもありがとうございました。
(2005年3月5日 五野マサヒロ ART WORK会場にて)