花の世界で活躍中のアメリカ人フラワーアーティスト、ドナルド・ラドヴィッチ氏。ハワイイをイメージしたパフォーマンスをお願いし、アレンジする時のポイントや、皆さんが家でお花を飾るときにも役立つようなヒントを伺いました。

Donaldo Radovich ドナルド・ラドヴィッチ
アメリカ シアトル生まれ。
ワシントン大学で美術史と彫刻を専攻。建築家として活躍。シアトルからハワイへ、そして日本に渡り草月流を学んだ後、独学でフラワーアレンジメントの世界 に入る。
ロマンチックでゴージャスな独特なスタイルは、ファッション関係のクライアントなど、各方面で高く評価されている。その活躍はフラワーアレンジメントのみ にとどまらず、ジュエリーデザイン、ファッション、インテリア関係のデザイン、建築家としてのキャリアを生かしたインテリアコーディネートディスプレイも 得意分野。日本、ハワイ、オーストラリアなど、国内外で活躍している。
Hotel Edmond、 青山TABASA、西武百貨店、Les Neides青山、渋谷パルコ、恵比寿三越、等数々のクライアントを持ち、忙しい毎日を送っている。
フラワーアレンジメントのクラスは、NHK文化センター、東京アメリカンクラブ、Les Neides青山等。

「海が好き」

─フラワーアレンジメントの世界に入ったきっかけを教えてください。
ドナルド:大学で建築を学び、それと同時に美術史、彫刻を専攻していました。
卒業後は建築家として仕事をしていました。そして、シアトルからハワイへ行って、ひょんなことから日本に来て、草月流のいけばなを学び、他にもいろいろな スタイルのフラワーアレンジメントを独学で勉強して、この世界で仕事をするようになりました。

─建築家からの転身というのは、めずらしい経歴をお持ちですね。
ドナルド:僕 の父も母もガーデニングが好きで、子供の頃から、生活の中に花が溢れている、という環境で育ち、僕自身も昔から花が大好きでした。だから、建築の世界から フラワーアレンジメントの世界へというのは、一般的に見ると、とても劇的な変化だと思われるようですが、僕にとってはそんなにびっくりするような事ではあ りませんでした。ごく自然なことのように。

─建築もフラワーアレンジも「立体」をデザインする、という点では似ていると言ってもよいのでしょうね。
ドナルド:そうですね、僕のフラワーアレンジには、建築の要素も入っていると思います。3Dで考えるという点で、似ている部分があるのかもしれませんね。

─現在は、日本を拠点にして活躍されていますが、日本はどうでしょう?住み心地は?
ドナルド:日 本は花の仕事をするには、すごくいいところ。だけど、日本は海が近くに無いからちょっと住みづらい。しょっちゅう下田とか、伊豆とか、時間ができたら行く ようにしています。海が大好きだから。将来はオーストラリアに住みたいと思ってます。海の近くで。でも、ずっとオーストラリアはつまらないかな、とも思っ ています。オーストラリアはちょっと田舎でしょ?だからもしそうなったら、絶対日本には月1回とか2回とか、仕事をしに来たいなどと考えてます。


「ハワイでリフレッシュ」

─海の近くといえば、ハワイにはどのぐらい住んでいたの?
ドナルド:2年ちょとぐらいかな。海が好きでハワイに住むようになったんだ。シアトルにも海はあるけど、冬は寒いから。ハワイは1年中暖かいしすごく気に入った。

─やはりハワイでも、海が一番好きだった?
ドナルド:うん、すごくよかった。今でも年に5〜6回行っています。今度は5月に行く予定。

─作品は、海とかそういうところからインプレッションが出るのですか?
ドナルド:イ ンスピレーションではないけれど、フィーリングが、自分がリラックスできるとか、リラックスする時にクリエイティブな事ができるとか。海を見たりハワイの 植物を見るとアイデアが出てくるというよりかは、全部のフィーリングがリラックスするとか、クリアとか、いい香りとか、身体と脳、マインドがいいコンディ ションになって、いろんなクリエイティヴィティができる。それは日本ではちょっと無理。忙しくてストレスがあって、ちょっと汚れた空気で、汚い海で、あん まりいいクリエイティヴィティができない。だから年に5、6回ハワイへ行って、リフレッシュしてくるんだ。


スケッチブックを持って、いろんなアイデアを書いて、そのアイデアが日本に帰ってくると現実になる。日本でクリエイティヴィティを出すのは難しい、特に東 京はね。沖縄とか北海道とか自然が多いところなら大丈夫だと思うけど、東京にいると忙しすぎて、人間関係とかいろいろ、ストレスが大変。東京に住むのは大 変。



─例えば、しばらく日本にいて、ストレスが溜まってきたらハワイへ行って、それで帰ってきて作った作品は前と全然ちがっていたりする?
ドナルド:うん、やっぱりちょっと違う。もっとリフレッシュされているかな。

─リフレッシュされて、いい味が出てくる。
ドナルド:そ うそう。ちょっとトロピカルなものを入れくなったりということも。帰ってきたばっかりだから肌も焼けていて、プルメリアの香りも頭に入っているから、香り のいい花を使いたくなってチューベローズみたいな花が良くなって、これを使おうとか。でもまた東京でいろいろやって疲れると、またハワイへ行く。


僕はシアトル生まれだから、ハワイはちょうど真ん中。日本から直接シアトルに行くとちょっとつまらない。東京からハワイへ、ハワイは3日か4日ぐらいいて 日焼けして、健康な顔を作って。そしたらママに会いに行く。で、ママが「You look good, look healthy、ああ、日本はいいねえ」と。実は直接行くと疲れているとか、顔が真っ白とか、だるいとかいろいろ。花粉症とか。そうするとママが心配する (笑)。だからいつも東京−ハワイ−シアトル−ハワイ−東京、この三角が一番いいね。

 

「自分が満足することが重要」

─フラワーアレンジメントにはいろいろなスタイルがあると思いますが、どんなスタイルが得意あるいは好き?
ドナルド:1つのスタイルに決める、という事はなく、アジア風だったり、ちょっとヨーロピアンとアメリカンのセンスが入っていたりといろいろなスタイルでやっています。仕事によってどんなスタイルでもできます。
そう、好きなお花を買ってきて、花瓶を置いて、で、「どうかな?」って。
でも、あえて好きなスタイルを選ぶとしたら、ヨーロピアンとかアメリカンスタイルかな。

─色の特徴はある?
ドナルド:それも日によって変わるるね。市場に行って、きれいな青い物が目に入ったら、今日は青い作品を作るとか。自分で好きなのは、ブライトで華やかなもの。自分で好きな組み合わせをすると、よく外人が作ったってわかると言われるよ。

─では、スタイルではなく、ドナルドが作っているパフォーマンスの中で、一番重要なのは何?バランスとかカラーとかいろいろあると思うけど。
ドナルド:ま ずは、自分が満足することが一番重要ね。自分が使いたいものを使ったとか。それが一番目のポイントだと思う。自分が満足だったらお客さんも満足すると思 う。お客さんがこれ欲しいから、お客さんがこれ好きだから、っていうだけでやると、自分らしさがなくなっちゃう。だから自分がやりたい、自分がいいと思っ ていることを信じて、自信をもって作る。そうやってこれまでやってきたよ。

─今日作ってもらったのは、「ハワイっぽい雰囲気」や「トロピカルっぽい雰囲気」を盛り込んでねってリクエストしたじゃない、そうすると、今日の作品の中でポイントになるところとか、ドナルドにとっての「トロピカル」っていうのはどういうところ?
ドナルド:ま ずは色かな、トロピカルをイメージさせる色。あと、使った花材が変わっていてハワイっぽい、トロピカルっぽいってところ。アンセリウムとかジンジャーと か、ハワイに行くと毎回毎回見る物は使わない方がいいかなって思って。僕のセンスはそういう一般的なものとは違うから。あとは普通とはちょっと違う色のバ ラを入れたりして価値を出したつもり。ちょっとお洒落でトロピカルで高級感もある3つの要素が入ったアレンジになったと思うよ。

─グリーンが多い感じがするんだけど、これはそのポイントだよね?
ドナルド:グリーンが多い方がトロピカルな感じがするし、フレッシュな感じでしょ。

─花の色も見えてくる、引き立つし。
ドナルド:そうそう、ただ、匂いはちょっと残念だったね(笑)。トロピカルな香りじゃない、今日のアレンジのインペリアルリリーはスカンクの匂い(笑)。

─やっぱり香りもポイントなんだよね。
ドナルド:香りも結構考えてやっているよ。例えばチューベローズを使うとすごくいい香り。カサブランカを使うと2個ぐらいで充分、5個ぐらい入れると強すぎる、強烈な香りになっちゃうとか。今日はちょっと勉強になりました(笑)。

「東京は花屋の天国」

─さっきも言っていたけれど、日本はお花に関わるにはいいところ?
ドナルド:ええ、すごくいい所。いい環境が揃っていて。普通の人でもみんながお花の価値を認めているし、仕事で言えばチャンスもたくさんあるし。それに花市場が最高、いいお花が世界中から入ってきて、東京はすごくいい。花屋の天国。

─そういう意味でいうと、ハワイはあんまり面白くないのかな?
ドナルド:ハワイはちょっと難しいね。オリジナリティを出そうとするには。市場で扱う花の種類の絶対数が少ないから。
例えば、ハワイより日本に来るアンセリウムの方が種類がたくさんある。真っ赤、黄色、ピンク、グリーン、ホワイト、ホワイトで真ん中がピンクだったり、ハ ワイでも見たことが無いような種類がたくさん入ってくる。蘭もきれいで種類も豊富、ジンジャーも赤だけじゃなくて、白があってピンクがあって、白とピンク の混ざっているものもある、黄色っぽいもある。これは日本にいないとわからないと思う。世界のお花が全部ここに来るから。ハワイは自然に育っているものが たくさんあるから市場には出てこないのだと思うけど。


逆にハワイは、すごく普通の、簡単に手に入るものを使っても「ああ、やっぱりハワイにいる」ってすごく思えて、そのへんはどっちがいいとかは言えないけれ ど。
でも東京もすごいよ、今は椿。水仙とか、梅とか。シアトルの冬は葉っぱもないし、もちろんお花も一本もない。グリーンもないし。東京は1年中何かお花が見 つけられる。冬のバラも咲いているし、ウィンターローズとか、ウィンタージャスミンも出てくるとか。お花がいつもあるのはとてもいいことだよ。

 

「自分のスタイルは経験から」

─ 日本の市場にはいろいろなお花が豊富なのだろうけど、普通に買おうとすると、やっぱりよくあるお花だったり、あらかじめアレンジされていたりする方が買い やすかったりするんだけど、自分なりのセンスを出したり、オリジナリティーを出そうとしたら、どうすれば上手く出来る?
ドナルド:安っぽく見えてしまう花でも、使い道を考えれば結構高級感が出たり、いいアレンジが作れることもあるね。でも、ガーベラとかスイートピーとかカスミソウを入れると、やっぱりそれなりに見えちゃうっていう事はあるけれど。
例えばカーネーションならば、グルーピングしてぎゅうぎゅうにたくさん、ぎっしり詰めたりすれば、カーネーションがお花というより、葉っぱものになって、 テクスチャーだけになってアートっぽくなるとか。
全部短く切ってボックスに詰まっているカーネーションの隙間にバラを入れるとか。お金をたくさん使わなくても、そのフィーリングに高級感を持たせることは 出来るね。


お花にも組み合わせに合う合わないがあって、同じ水に入れるとだめになったりするとかがあるけど、それも経験。経験がいっぱいあると、だんだん自分のスタ イルが出てくるし、自分のフィーリングがあるお花のアレンジが出来るようになる。学校に行くよりも、自分でいろいろ試してみるのが一番。僕はいつも生徒達 に言っているんだけど、僕はテクニックは教えるけど、色の組み合わせとかは自分の経験で作るもの。市場に行って、花屋に行って、好きなお花を最初に手に とって、そしたらその周りに何を持ってくるか考える。好きな色の組み合わせとか、そういう自分のスタイルは経験から出来てくる。失敗も多いかもしれないけ ど、それは間違いじゃない、それが経験になるのだから。

─じゃあ、何度も何度もやってみると。
ドナルド:自分なりのオリジナリティーやセンスを磨きたいのであれば、あらかじめアレンジしているものはなるべく買わないほうがいいかもね。

─失敗しても何度もやっているうちに、自分のオリジナリティが出来てくる。
ドナルド:そ うそう、で、必ず写真を撮ることね、毎回毎回。「今日作ったのはあんまり好きじゃない」っていう時も必ず写真は撮った方がいいよ。あとから見れるから、 「ここがよくなかった」って。この前はダメだったけど、今回はこうしてみようとか。あと、いろいろ遊んでみることだね。このお花がだめになっちゃったか ら、短く切って小さいアレンジを作ってみるとか、自分の庭にあるものを入れてみたり、葉っぱを足してみたり。どういうフィーリングとか、どういう組み合わ せとか、いろいろ遊んで試してみたほうがいい、絶対に。

─ところで、フラワーアレンジメントの他にもジュエリーデザインなどいろいろなお仕事をされているけれど、そのへんのお話も聞かせてもらえる?
ドナルド:ジュエリーは今は、ファインジュエリーのデザインをやっているんだ。ライン的には、結構高級なライン。使う石もかなりいい石を使っているような。だから、デザイン的にはそれほど変わったものではなくて、すごくコンサバティブだったりかわいらしいものだったり。
今後は、もっとカジュアルにもできるようなラインのジュエリーもデザインしたいと思っているんだ。モチーフが変わっていてたりするのもいいかもしれない ね。


ビーズを使ったデザインも始めているんだ。トルマリンとか、アクアマリンとか、トルコ石とかを使って。普通のビーズよりちょっとだけ高いけれど、石からは パワーがもらえるでしょ、アメジストを身につけると幸せになるとか、トルマリンは健康的とか、石に意味がある。あと光も違うし。

 

─ストーンパワーみたいなことにも興味があるの?
ドナルド:そう、ストーンパワーもそうだけど、色にもね。オレンジ色とか黄色とか、ブライトで暖かい色の石が使いたい。サンストーンという石をこの前みつけたんだけど、中に光ファイバーみたいなのが入っていて、太陽の石っていうんだけど、それは絶対使ってみたいんだ。

─例えば、シルバーと石と一緒になったようなデザインだったら、カジュアルにも出来るよね。
ドナルド:そう、カジュアルにもできるけど、ドレスアップした時にもできるようなデザイン、そういうのを今デザインしているところ。
今度、銀座のプランタンでお花とビーズの展示会をやるんだ。デモンストレーションもやるから、どんな石を使っているかとか、見に来て欲しいな。

─そうですね、是非お邪魔したいと思います。 最後に、いつもみなさんに聞いているんだけど、ハワイに行ったときはいつもどこに行く?
ドナルド:だいたいオアフ島、ワイキキも好きだよ。あとはノースショアも良く行くね。サンセットビーチまでよく行くよ。あとはカウアイ島が好き。マウイとビッグアイランドには行った事がないから、今度は行ってみようと思っているんだ。

─ハワイで一番リフレッシュできる所は?
ドナルド:Love Hawai'i、ハワイのフィーリング、ハワイのカラー、ハワイの人、すごくのんびりしていて、優しくて、何でもALOHAとか。I Love Hawai'iね。
ハワイで一番良かったのは、カウアイ島のナ・パリ・コースト。そこでハイキングして、滝があって、滝壺で泳いだりして、それは最高だったよ、すごく良かっ たよ。

─ハワイが大好きということで、今後このサイトとドナルドのコラボレーションで何か作れたらいいよね!
ドナルド:Yah,Yah Sure,話がだんだん広がって、僕のアイデアも増えてくるよ。

─今後是非一緒に何かやりましょう!
ドナルド:オーケー、グッドね、サンキュー。


─今後ともいろいろとよろしく!今日はどうもありがとう!(2005年3月20日)


ドナルド氏による本日のアレンジメント

Donaldo Radovich ドナルド・ラドヴィッチ
e-mail: dwrtokyo@yahoo.com