
2024年10月に来日したライアテア・ヘルム
美しいレオ・キエキエ(ファルセット)を
聞かせてくれた
2000年に17歳でデビューから25年
ジェノア・ケアヴェの後継者といわれた少女は
ハワイイ最高の歌姫であり
文化継承者として存在している
2023年には
「A Legacy of Hawaiian Song & String, Volume One」を
リリースしナ・ホク・ハノハノ賞では
多くのカテゴリーで栄冠に輝いた
2025年5月にライアテアが出演する
興味深いYoutubeがアップされた
その映像をもとに
彼女が語る
ハワイイ・ミュージックについてを紹介する



かなり長い内容になります
しかし…
興味深い話ですので
時間があるときに
この映像は音楽家ライアテア・ヘルムが
ミュージシャンのカレイ・ガミアオ、コーリー・フジモトと
共演するライブパフォーマンス
(約1時間6分)
このセッションは
ハワイイ・ミュージック・サプライ
(Hawaii Music Supply)によって制作され
ハワイイの伝統音楽を深く紹介している
はじめに
この映像でライアテア・ヘルムは
カレイ・ガミアオとコーリー・フジモトと5曲歌っている
その間に3人の会話があり
ライアテアはハワイイ・ミュージックについて語る
映像の概要
とりあえず概要を書き出す
歌っている曲は
1.’O Kalena Kai
(Chant by Liholiho, music by Charles E. King)
2 . Old Plantation
(Words by Mary Jane Montano, Music by David Nape)
3 . Ka Ipo Lei Manu
(Queen Kapiʻolani)
4 . Kimo Henderson Hula
(Helen D. Beamer)
5 . Aloha ‘Oe
(Queen Liliʻuokalani)
ハワイイ・ミュージックは
文化と歴史を保存し伝承する上で
非常に重要な役割を担っている
以下に、ライアテアが語っている
ハワイイ・ミュージック
その役割に関する主な点をまとめた
場所や地理との繋がり
メレ(歌やチャント)は特定の場所、と深く結びついている
歌はこれらの場所の物語や情景を描写し
演奏者は異なる島や地域で演奏する際に
その土地に敬意を表してゆかりのあるメレを選ぶことが
hoʻokipa(おもてなし)の一部として重要であるといっている
歴史的な出来事や人物の記録と伝承
ハワイイ・ミュージックは
チャントとして始まったものが歌になり
また特定の歴史的出来事や人物の物語を伝える媒体となっている
音楽は、過去の出来事や社会の変化
(政府や言語の変化など)を
振り返るきっかけとなる
家族の歴史と個人的な記憶の維持
ハワイイ・ミュージックは
ハワイイアン家族の歴史や個人的な記憶と深く結びついていて
文化がどのように世代を超えて受け継がれるかを示している
文化的な価値観の表現
音楽は、ʻohana(家族)や
hoʻokipa(ハワイイのおもてなし、歓待)といった
ハワイイの価値観(lōina)を表現し、促進する手段
特に「Old Plantation」や
「Kimo Henderson Hula」のような
古典的な歌は、これらの価値観や
友人や祖先を敬う気持ちを反映している
過去と祖先への敬意の表現
「Ka Ipo Lei Manu」これらのメレを歌うことは
Aliʻi(王様)が今もここにいるかのように
過去を称え続ける意図があると言われている
歌い手は、単に歌を演奏するだけではなく
メレを伝達する媒体であり
その声を通して「祖先を運んでいる」という感覚がある
深い理解への探求
単に歌を歌うだけでなく
作曲家の背景や意図
歌が描写する場所
そして歌に込められた感情や文脈を理解することが
より深い意味を与える
歴史や系譜の研究と同様に
歌やメレについても全体像を見ること
複数の視点(ハワイイアンと西洋など)を
取り入れることが重要
メレの永続化と教育
古い歌やハワイイの古典を
「永続化(perpetuate)」したいという願望が
歌を共有する理由の一つとして挙げられている
ハワイイにおいて
オンラインの歌唱コースのような教育プログラム
また学校の教師がウクレレを教えられるように支援するなど
文化的な知識や技能を広め
次世代に伝えることがおこなわれている
単なるエンターテイメントを超えた繋がり
ハワイイ・ミュージックは
歌い手にとって
「単なる歌以上のものである」と語られている
それは、祖先の感情や経験に共感し
自分の中に祖先の特性を感じ
より深く個人的で意味のある繋がりを考えることだと
このように、ハワイイ・ミュージックは
単なる音や歌詞の集合体ではなく
場所、歴史、家族、価値観、そして人々を結びつけ
過去から現在、そして未来へと文化と記憶を繋いでいく
生きた媒体として機能していると説明している



ここからは
映像をもとにした
ライアテア・ヘルムに関する
お話です
静かな始まり
ウクレレが置かれている
彼女が椅子に座る
静かに微笑み
歌い出す前に、記憶を呼び起こす
ライアテア・ヘルム
名前はタヒチの島に由来する
その島に、タプタプアテアという聖地がある
航海の出発点
文化が出発した場所
彼女はその名を背負って生まれてきた
最初の音
ライアテアが最初に教わった曲は「Pū Pū」
祖母からだった
小さなウクレレに、シールを貼った
それが最初の楽器だった
ウクレレは彼女にとって
「安心毛布」のような存在になっていった
父はギターを弾いた
オベーションのギターだ
ホテルで演奏していた
「Alika」を歌ったときの長い音に娘は驚いた
その音を追いかけて、彼女は背中を追う
父に追いつこうと
歌いながら、呼吸を覚えた
子どもの頃喘息を患っていた彼女は
父親の「Alika」の長いフレーズを真似
呼吸法を練習し
肺活量を鍛え、病を克服した
O Kalena Kaiと土地の記憶
映像で最初に歌ったのは「O Kalena Kai」だった
リホリホ(カメハメハⅡ世)のチャントに
チャールズ・E・キングが曲をつけた
少し、何かを思い出すような表情の静寂から
軽やかなヴァンプが始まった
話は、地名と、祖先の話に移っていった
リフエという地名が出てくる
オアフ島のスコフィールド・バラックスのあたり
(オアフ島中央のワヒアワにある米軍基地)
かつて”リウ”と呼ばれていた場所
彼女の母方の祖父の家系は、そこにいた
もっと正確に言えば、アナフルにいた
アナフルの最後のコノヒキだったという
土地を治める人だった
家族の物語は、その土地に残っている
1820年代
宣教師たちがハワイイにやってきた
キリスト教が広まり、伝統宗教が否定された
カアフマヌ(カメハメハⅠ世の王妃)が
「古い宗教を廃止せよ」と命じた
彼女の祖先は、古来の信仰を守っていた
カフナの系譜にあったという
アナフルで儀式を続けていた
だから、流された
ワルアとリウから、カウアイ島へ
彼らは島を追われ、別の島に根を下ろした
その記憶が、彼女の中にある
土地の名前を呼ぶたびに
その出来事が蘇る
歌は、土地の記憶をよみがえらせる
それが「O Kalena Kai」だった
声という楽器
「声は、ひとつしかない楽器」
彼女はそう言った
コーヒーは飲まない
喉が乾くから
歌う前には、時間をとり
体と心を落ち着ける
スケール練習もする
声を鳴らす準備を、丁寧にする
そうしないと、歌は出てこない
歌うとは、声を出すことではない
記憶を引っ張り出すことなのだ
メレが描く風景
「Old Plantation」
デイヴィッド・ネイプが数分でメロディをつけた曲
ブレイズデール・センターの場所にあった
カーティス・ウォードの広大な邸宅が舞台
かつて、彼女の祖先が住んでいたという話がある
王族をかくまったこともあったという
歌いながら、その家の記憶を旅する
風が吹き
小川、魚の池、水車の音が聞こえる
オールド・プランテーションの風景が
声によって蘇る
hoʻokipa もてなしの歌


「Kimo Henderson Hula」
ヘレン・デシャ・ビーマーの代表作
ハワイイ島、ヒロ側のピイホヌア
その場所と、そこに住んだ友人へのオマージュ
フラとメレ
もてなし(hoʻokipa)の心
もてなす側、もてなされる側
どちらも、丁寧に迎え合うこと
それがハワイイの価値観
歌には、そのすべてが入っている
音楽は誠意だ
教えるということ、学ぶということ
彼女は教えている
オンラインで
世界中の教師や学生たちに
歌を通じて、土地に敬意を払う
演奏する島が違えば、選ぶ曲も変える
メレはその土地の言葉であり、祈りでもあるから
学びは、いつも双方向
生徒からも学ぶ
祖先からも学ぶ
自分自身からも学ぶ
声が運ぶもの
彼女は歌う
ただ歌うのではない
そこには歌を作った人の思いがあり
歌の舞台となった場所がある
祖先がいる
すべてを理解しようとする
それが、メレの責任
それが、歌い手の使命
精神の系譜
ライアテアとジョージ・ヘルム
父親ザッカリーとジョージは兄弟
声の奥にある信念が、二人をつないでいる
ジョージ・ヘルムは
ミュージシャンで活動家だった
カホオラヴェ島を守ろうとした
音楽で訴え、命をかけた
彼の声は、祈りだった
土地、祖先、正義
それを声で伝えた
ライアテアの歌にも、それがある
柔らかい、けれど、強い
怒りではなく、優しさで文化を包み込む
声のなかに、輪郭がある
戦いではなく、継承
彼女もまた、声で闘っている
そして、祖先の声
「わたしたちは祖先そのものなのかもしれない」
ライアテアはそう語る
体に残る癖
顔の輪郭
呼吸のリズム
声の質感
それらは過去から来ている
声は、それを連れてやってくる
メレは、記憶の舟である
声が続くかぎり
歌は短い
記憶は長い
その両方を、彼女の声は運ぶ
歌うということは、誰かのために何かを渡すこと
それが、ライアテア・ヘルムという人のやり方だった
この文章は、Hawaii Music Supply によって制作された
youtube映像をもとに翻訳、再構成、しています
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