HAWAII

ハワイイで起きている”TMT計画”と“Protect Mauna kea”運動を読み解き、いかに行動するべきかを考える(前編)

ハワイイで大きな問題が起こっている

一時、静かになっていた問題が
再び大きくなっているというのが正しいのだが
それは、ハワイイ島のマウナ・ケア山頂に建設予定の
「Thirty Meter Telescope (TMT)計画」のことだ
(TMTについては後述するが巨大天体望遠鏡施設のこと)

*この原稿は書き始めから10日ほどかかってしまっている
 その間に状況に大きな変化が起きている
 さらには、文章がどんどん長くなっているので…
 2回に分けてアップすることにした
 1回目は歴史と基本的な話しを書いていく

この問題を、ハワイイの外から書くことは
センシティブなので注意深く書かなくてはいけない
まず、最初に8011webの管理人としての考えを明らかにしておく

ハワイイの人たちがスローガンとしている
“Protect Mauna kea”を支持する

彼らはTMT建設反対をスローガンにはしていない
“Protect Mauna kea”といっている
ここが肝だ

これが意味することは
TMT建設反対だけではなく
マウナ・ケアの現況を見直す50年の歴史に対する運動なのだ

それではTMTはどうするのか?
私の意見は「建設反対」である
ただし書きが必要なのだが
しっかりとした話し合いの上で計画凍結
そして、推進派、反対派、双方理解しあっての建設中止を願う
(計画の変更、中止には複雑なプロセスが絡み合っているのだが…)

さらには、現在あるマウナ・ケア山頂天文台群の
再構築、ルール作りをおこなわなければならないだろう
とにかく、この問題で
ハワイイの人々が分断されることがないように願っている

さかのぼること4年

2015年TMT建設は開始されることになった

写真:『国立天文台』

法的にはすべての許可がクリアーされ、何も問題はなかった
しかし、多くの”TMT建設反対派”が山頂に通じる道を封鎖した
それにより、反対派は31人の逮捕者を出してしまった
(この当時は「TMT建設反対」を強く打ち出していた)

これをきっかけに、建設許可が差し戻しになり
法廷での戦いなどが再び始まり
建設計画は一時凍結となり
現在に繫がっていく

2015年、私も当時執筆していた有料WEBメディアや
8011webのSNSに投稿し
国立天文台への建設中止嘆願などを支援したが
(今考えると、ことの本質に対する理解が甘かったと少し反省)
日本での反応は鈍かったし
私の周辺でも一部のハワイイに深くコミットしている
人からしか声は上がらなかった

しかし、今回は当時よりSNSがさらに浸透し
ハワイイのフラ関係者が表面だってコミットしているからなのか
日本のフラ・コミュニティーを中心に話題となっている

さらには、最近ではハワイイ出身の有名人が支援を表明
マウナ・ケアにやってくるなど関心を集める要素が膨らんだ

本質を知り、自分の頭でしっかり考えたい

ここ数日、日本でもいくつかの場所でネット上だけではなく
メッセージ・ボードや横断幕を持ち、声を上げるなど
実態のある反対運動や集会がおこなわれるようになり
マスメディアにも取り上げられるようになってきた

皆さん、大好きなハワイイのためにと
真摯に行動されている
素敵だと思う

ハワイイのマウナ・ケア保護派の人達も
日本の人達へ連帯を呼びかけているが
事の事実、歴史を分かって連帯しないと意味がない

「私の知っているハワイイの人たちが反対している」から
「ハワイイ好きだから、フラ好きだから反対しなくちゃ」ではなく
なにが問題なのか…考えるきっかけが必要かも知れない

そこで、4年前に書いた記事をもとに
自らの勉強のためにも
この事の歴史
その後の出来事、現在のようすを
様々な視点から
日本にいる自分として冷静に書いておきたい

7月30日 事態は動いた

(最新の状況)
*7月30日
デイビッド・イゲ ハワイイ州知事
TMT建設阻止のためにマウナ・ケア山頂へ向かう道を封鎖している
“Protect Mauna kea”派の人達を排除するため
彼が2週間前に発令した緊急事態宣言を解除するとともに
建設の開始が延期されるだろうと述べた
(ハワイイにハリケーンが近づいていることによる危険回避の意味もある)

さらに、国土天然資源局”BLNR”(ここが山頂の使用許可を出している)
2年間の工事開始延長を承認したため
TMTの建設開始期限が2021年9月になったことを発表
TMT建設グループは”BLNR”からの条件付き使用許可を遵守するため
2019年9月26日までに工事を開始する必要があったが
2年間の猶予を得ることになった

TMTスポークスマン、スコット・イシカワ氏によると
TMT関係者は「現在の状況を話し合いで解決するためには時間が必要」と
許可証の延長を”BLNR”に要求し受け入れられたという

しかし、スコット・イシカワ氏は
「早期の建設再開を目指したい」とも語っている

これが、実行されれば
この運動も一旦沈静化し別の局面に
動いていくことになるだろう
(この日以降、SNSのタイムラインの投稿が激減している)

何も解決せずに先延ばしされたといった状況であるが
とりあえずは“Protect Mauna kea”派
目的の一つは達せられたともいえる

しかし、この問題が終わりを迎えたわけでなく
しばし、小康状態に入る可能性があるというだけ

日本では2年間の建設開始延期と報道されたりもしているが
少しニュアンスが違いそう
2021年9月までの間に、いつでも工事開始ができる
そう読み取るべきで
スコット・イシカワ氏の
「早期の建設再開を目指したい」につながる

TMT建設をする側にも時間がない理由があるのだ
(その理由は後ほど)

今回の運動の精神は “Kapu Aloha”

この州知事発表前に話を戻す

日本の方のSNSを読んでいる限り
多くの誤解もあるようだ

さらに、私が読んだ
”Facebook”の書き込みには
日本のTMTメンバーの個人情報である電話番号を載せ
電話で反対の意思を表明しようなどという
とんでもないものがあった

このような方法は、ハワイイの人たちが
この運動の基本理念とし
訴えている“Kapu Aloha”の精神とは異なっている
それ以前に、常識としてあり得ないだろう

“Kapu Aloha”については後述するが
基本的行動は
・非暴力
・禁酒、禁煙なども含まれている

先日、都内で集会を開いた方達が帰り道に
「皆で乾盃、ビールが美味しい」とSNSに書き込んでいたが
ま〜このあたりはご愛敬といえるが…
せめて、家に帰るまでは禁酒をしていたら完璧だったのだろう…
昔「家に帰るまでが遠足です」と先生に言われたこと思い出した
(親父の戯言)

日本で出来ることは
国立天文台に計画撤回を訴えることだとの意見も多いが
一つの選択肢ではあるが…
実効性は薄いと思われる

さらに
よく書かれているのが
「私たちの税金を…」
「これが富士山だったら許せるのか…」
そんな書き込みが多くあり、共感を得ているようだが
一見正論ではあるが私には違和感しかない
「何が?」それも考えていく

マウナ・ケアとはどのような場所?

まずは知識として何が起きていて
何が問題なのかを知ろう

TMT建設時の予想写真 一番上がTMT 写真:『国立天文台TMTプロジェクト/4D2Uプロジェクト』

マウナ・ケアのTMT建設計画とはなにか?

基本情報として
マウナ・ケアについて
ハワイイ島のマウナ・ケアは標高4205メートル
ハワイイ諸島で最も高い火山

最後の噴火は4500年前といわれ現在は休火山

マウナ・ケアとは、ハワイイ語で「白い山」の意味で
雪が降り、山頂では冬にスキーも楽しめる

マウナ・ケアは、”Mauna a Wākea”と呼ばれていた
ワーケアはハワイイの創世神話「クムリポ」に登場する男性神で
女性神パパと結婚し子を作る
それがハワイイ諸島の成り立ちともいわれている

創世の神ワーケアの名が付くマウナ・ケアは
雪の女神ポリアフなど多くの神が住む聖地であり
ハワイイにとって最も、神聖、重要であり
侵すことの出来ない場所といわれている

先人達はこの地で様々な聖なる儀式を行い
マウナ・ケアに祈りを捧げ
この地を大切にしてきた

最近のインタビューで
ハワイイの伝統、文化を大切にするクプナ達は
今でもマウナ・ケアのことを
”Mauna a Wākea”といっていたのが印象的だった



マウナ・ケア天文台群とは?

そんな、マウナ・ケアにはもう一つの顔がある
それは、山頂にある世界中の研究機関が構える天文台群

世界最高峰の高度な天体観測を行い
多くの成果を上げている
ここは、天文学の聖地でもある

天文台群は
1968年よりハワイイ大学が管理している
面積約500エーカーの
マウナ・ケア科学保護区 (Mauna Kea Science Reserve) にあり
世界各国の研究施設がこの土地に天文台を建設し
施設利用料をハワイイ大学に支払っている

ここは、太平洋の孤立した島の高い標高にあること
観測可能日が年300日以上あり、湿気が少ない天候
北半球だけでなく、南半球もカバーできる地理的環境

さらに、島の人口密度が少なく
行政として夜間の照明などに制限を加えていることなど
世界で最も天体観測に適した場所といわれている

山頂付近には最大13の施設しか建てられないと
ハワイイの人達との
話し合いで決められている
(これは話し合いで契約ではないようだ)

 

マウナ・ケア天文台群についてもう少し

1960年代に入り
マウナ・ケアの天文学的重要性がいわれ始めた
そこで、1964年ハワイイ大学(UH)
山頂付近Pu’upoliahuにテストドームをつくり
試験観測を始めた
その結果、マウナ・ケアの天文学的適性が立証された

1968年、ハワイイ第二代知事”ジョン・A・バーンズ”
「マウナケア科学保護区」を設立し
  国土天然資源局 ”BLNR”
(The Board of Land and Natural Resources)
ハワイイ大学が科学保護区を科学複合施設として運営することを
許可する権限を与えた

第一号の天文台は1970年に観測を始めた
「ハワイイ大学2.2M口径天体望遠鏡」

その後、マウナ・ケアの天体観測に対する優位性は認められ
世界各国の研究施設が天体望遠鏡の建設を申請し認められた

現在、日本の「すばる望遠鏡」を始め11の国、観測施設が
13の天体望遠鏡を構えている
(12基ともいわれているが…
 Maunakea Observatories Support Services (MKSS)などは
 ホームページに12基と書いてある
 ”W. M. Keck天文台”には二つの天体望遠鏡がありドームが二つあるが
 それを、どう数えるのか
 あるいは”Caltech Submillimete天文台”は2015年に観測を終了し
 取り壊しの準備をしているといわれているこれを数えないのか?
 ちなみに、すばる望遠鏡公式HPには13基となっている
 このあたりは、TMTを13基目としたい意図が見え隠れ?)

50年前の建設開始時から引き金が…

この天文台群の建設時にも問題があったと保護派はいう
最初の「天文台」の許可がおりたのち
次々に「天文台」は建設された

一基毎に、説明会、公聴会が開かれ
ネイティブ・ハワイイの人々からの意見を聴き
建設がおこなわれるはずであったが
それは、おこなわれなかった

BLNRは「事後承諾」で許可を発行していた
よって、承認の正当性自体に疑問があり
現在ある天文台の存在自体に問題があると
“Protect Mauna kea”派はいう

この映像に1964年から現在まで50年間の歴史が描かれている
“Protect Mauna kea”派から見た
マウナ・ケア負の歴史といえる

日本が世界に誇る”すばる天文台”

その、マウナ・ケア天文台群には
日本の”すばる天文台”もある

その歴史を簡単に
1984年に国立天文台(当時は東京大学東京天文台)で計画が始まり
1991年に予算が承認された
1992年マウナ・ケア山頂での工事が開始され
1997年にヒロのハワイイ観測所が完成
1998年山頂に主鏡が設置され
12月初めて星の撮像をおこなう
本格的な観測が始まったのは
2000年12月から
(すばる望遠鏡公式HPより)

レンズの口径は有効口径8.2m
当時、世界でも最新鋭
日本の技術の粋を集めた天体望遠鏡

建設予算は約400億円
山頂の望遠鏡が捉えた画像は
ヒロのハワイイ観測所でデーター解析をおこなっている
現在、約120人のスタッフが働いている

1999年から現在まで
多くの貴重な科学的成果報告がなされていて
日本の天文科学研究の最前線を担っている

2009年TMT計画がマウナ・ケアに建設で合意

そして2009年
そのマウナ・ケア山頂に、新たな施設を作ろうという話が
日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの5ヶ国によって始まった
「Thirty Meter Telescope (TMT)計画」

口径30メーターの望遠鏡を造ろうという国際協力プロジェクト
現在のすばる望遠鏡の4倍の口径で、その建物は大型ビルディング並で
地下を持つ18階建てのビルに相当し、建物面積は8エーカー(約9800坪)

これを既存の天文台をスクラップして建てるのではなく
山頂の新たなスペースに建設するという計画

TMT計画が計画通りに進めば
2013年7月にハワイ州から建設許可が下り
2014年10月には起工式が行われ、完成予定は2021年となっていた

長くなった…
ここまでおわかりいただけただろうか
前半はここまでにしておく

後半は
TMT計画がマウナ・ケアで始まった経緯
日本、国立天文台の関わり方
TMT計画の現在に至るまでの流れ
“Protect Mauna kea”派の主張
”TMT推進派”の主張
などなど…をまとめていきたい

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