Uncle Sハワイイには
”サイミン”という麺料理がある
ハワイイのソウルフードの一つだ
しかし、日本ではあまり人気がないようだ
見た目はラーメンなので
ラーメンと比べられて、損をしている
サイミンはラーメンとはまったく異なる料理だ
サイミンを、サイミンとして味わえば
その美味しさにきっと気づくはずだ
そしてハワイイの人たちにとっては
美味しかろうが不味かろうが
ノスタルジックな郷愁の味なのだ
さて…
サイミンとはどんな食べ物なのか!
朝の光とサイミン


ワイキキの朝は
やわらかな光ととも聞こえてくる
ゴミ収集車や
ワイキキビーチをクリーニングする音で始まる
ラナイに座り、コーヒーの香りを楽しみながら
今日の予定や、何をたべようか考える
そんな朝に、ふと思い出すのが”サイミン”だ
朝ご飯にサイミン
シンプルなハンバーガーとサイミンの組み合わせ
軽やかでやさしい味わいのスープに
主張の無い麺
ハンバーガーはスープにディップして食す
日本人には考えられない食べ方
そして合間には、コーヒーも飲んでしまう
これぞハワイイの
ローカル・ブレックファーストだ
困惑の麺料理
ハワイの食卓で、ひっそりと
だが確かな存在感を放つ一杯
きらきらと輝くリゾート料理でもない
ポリネシアンの伝統を前面に出した一皿でもない
ごくごく日常的で、飾り気のない
ただのスープ・ヌードル
”サイミン”
それが、そいつの名前だ
初めてハワイイを訪れた人は
この「ローカル」な食文化に出くわすと
最初は戸惑いがある
メインランドから来た人にとっても不可解であり
日本から訪れた観光客にとっても
ラーメンと似てはいても
明らかに異なる味と食感には困惑させられる
だが、ハワイでしばらく過ごし
島の人々と交流する事ができれば
ふと気づくのだ
この、一見すると「生物学的に地元産」でも
「農業的に地元産」でもない
「文化的に地元産」と呼ぶべき
奇妙で多様な食べ物こそが
この島の「ソウル」なのだと
それがサイミンの正体だ
サイミンの起源
サイミンは、20世紀初頭の
プランテーション時代に
中国、日本、フィリピン、ポルトガルなどからの移民が
持ち寄った食文化が融合して生まれた
それぞれの文化が交差し、やがて一つの料理として定着した
サイミンという料理名の由来には
中国語説、日本語説、沖縄語説、ハワイ語説など諸説あるが
有力なのが中国・広東語で細い麺を意味する
「細麵(スィー・ミェン)」から来ているとするもの
サイミンはラーメンの派生ではあるが
決して単なる模倣ではない
多民族社会のなかで独自の進化を遂げ
「ハワイイで生まれたヌードル・スープ」として誕生した
ハワイイ生まれのスープ


サイミンのスープは
ラーメンのような強さとは異なり
あっさりとして繊細だ
さっぱりしていて
物足りなさを感じる味だ
日本でいう「出汁」のうま味を強く感じさせる
繊細な味わいと言えるかもしれない
味が物足りなければ「他のものを加える」ことを
前提として作られている
サイミンの正しい食べ方
サイミンのお店に行くと
どんぶりと一緒に小皿が出てくる
テーブルには、塩、胡椒等とともに
醤油とマスタードが置かれている
ローカルはまず
小皿にマスタードと醤油を混ぜた
からし醤油ソをつくる
そのソースをスープに混ぜたり
麺につけたり
好きな味にして食べるのが
サイミンの正しい食べ方だ
サイドオーダーは必須
また、ほとんどの人が
サイド・オーダーとして
ビーフスティック(ビーフの照り焼きを串に刺したもの)
海老の天ぷら
シンプルなハンバーガーなどを一緒に注文することが多い
それらを、スープにディップして
食べるのがローカルスタイルだ
麺の個性
麺は中華麺風の太麺が多く
かんすいを使っていなかったり
使う量がラーメンに比べて少ないため
色は白っぽく、うどん風の麺も見られる
しかし、ハワイ島の”ノリズ”や
アイエアにある”フォーティーナイナー・レストラン”など
細麺を提供している店もある
好みの麺は見つけられる
ごちゃ混ぜ文化のトッピング
そして、その上に乗る具材が
ハワイイの「多文化のるつぼ」ぶりを雄弁に物語る
定番は緑ネギ、スクランブルエッグ、チャーシュー
さらに、中華料理のワンタン
そして……そう、スパムだ
ラーメンではあまり見かけない具材が
サイミンでは当たり前のように鎮座する
この大胆さ
多文化性の受容こそが
ハワイらしさだ
スープの材料は何だ
サイミンのスープは
店によって味に違いはあるが
見た目はほぼ同じだ
ラーメンのような
見た目から違うことはない
しかし、味には個性がある
スープには主に以下のような材料が使用される
- 干しエビ:海老の旨味がスープに深みを与える
- 干し椎茸:香りとコクを加えるために使用
- 昆布:出汁のベースとして、旨味を引き出す
- 生姜:爽やかな風味を加える
- 塩や醤油:味を調える
これらの材料を使いスープが完成するが
各店で独自の配合、材料など工夫をし
オリジナリティーを出している
共通しているのは、そのあっさりとした味わい
暑い気候の中でも食べやすくなっている
マクドナルドでも提供されたオカハラ・サイミンの味
サイミンが
ソウル・フードになった背景には
いくつかの要因がある
一つは、「オカハラ・サイミン」のような家族経営の事業にある
1933年に日系移民のオカハラ・ショウイチ氏が
ホノルルのモイリイリにある裏庭の小屋で
麺とサイミンを作り始めたのが
「オカハラ・サイミン」の始まりだという
彼らの工場は成長し、オアフ島最大の製麺屋の一つとなり
その麺は、マクドナルドのメニューに載るまでになった
マクドナルドは、1968年にハワイイに初めて進出し
地元の食文化を取り入れる形でサイミンをメニューに加えた
しかし、2022年6月30日をもって提供が終了した
その理由は、長年にわたり麺を供給していた
「オカハラ・サイミン」が閉店したためだった
オカハラのサイミンは「至る所にあった」存在だった
ハワイイの人たちにとって
オカハラ・サイミンのロゴは「プライド」だったという
そして、彼らの事業を通じて
「何世代にもわたって子供たちがサイミンで育った」と
語られるようになった
サイミンの普及と定着において
彼らの役割は非常に大きかった
ちなみに
現在、ハワイイの製麺は
「サンヌードル」の独占状況になっている
1981年に夘木栄人(うき ひでひと)氏が
栃木県からハワイイへ渡り
ホノルルのカリヒ地区で製麺業を開始
各ラーメン店のスープに合わせた
200近いカスタム麺を製造し
メインランド、ヨーロッパにも販路を広げている
ミスター・サイミンの哲学
もう一つ重要なのが
1967年創業の
「シローズ・サイミン・ヘブン」の店主
フラン・シロウ・マツオ氏のような存在だ
サイミンを“軽食”から“しっかりした食事”へと
昇華させた人物だ
ミスター・サイミンと呼ばれた彼の哲学は
「シンプルに保つ(keep it simple stupid)」だったという
複雑にせず、誰でも作れるシンプルさこそが
文化を定着させる鍵だった
サイミンは「帰る場所」の味


サイミンがハワイの人々にとって特別なのは
それが強い「ノスタルジアの味」であり
「家に帰ってきた」と感じさせてくれる存在だからだ
ハワイで育った人の多くがサイミンと共に育ち
多くの思い出を持っている
そして、その子供たちもまたサイミンを食べて育ち
大好きになっていく
「ローカル」という誇りと食文化の意味
興味深いのは、ハワイの食文化における
「起源」や「本物性」という概念で
学術的な議論ではしばしば重要視されるが
ハワイでは異なる民族グループ間で
この問題はそれほど重要ではないらしい
ハワイイの食文化において重要なのは、出自ではない
民族的な“起源”よりも
“皆が共有するローカル文化”であること
食文化研究者レイチェル・ローダンは、こう記す
ハワイの食文化は「ホームグロウン(自生型)」ではなく、
「ナチュラルライズド(移植定着型)」である。
つまり、持ち込まれた食文化が
この地に根を張り、共通の文化として育っていく
サイミンはその象徴だ
それは、1959年の州昇格以降
“日常的な州民意識”の象徴として、
“本土からは見えないローカルなアイデンティティ”として
存在し続けている
最後に
ずいぶんと長くなってしまった
おすすめのサイミン店については
また別の機会に書こうと思う
サイミンはラーメンでもなく、フォーでもない
サイミンは、複雑な味わいで未知の味覚を刺激するような
食べ物では決してないが
それは、ハワイイの人たちにとって
「ふるさとの味」なのだ
それはその美味しさゆえにだ
時に、シンプルさこそが正義なのだと思う
サイミンを食べる旅に出たくなった


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